税金・税務・財務・資産運用
3つの分散効果を発揮した積み立て投資
結婚や子育て、住宅購入、老後といった様々なライフイベントを見据えたうえで、自助努力による資産形成が求められています。
政府も税制優遇メリットを付帯したつみたてNISAやiDeCoなどの制度活用を促しており、皆さんのなかにも両制度の利用を検討されている方がいらっしゃるかと思います。
特に両制度を活用する際には、投資信託で運用するケースが多いと考えられますので、今回は、リスクを抑えた投資信託の運用を実践すべく、3つの分散効果を発揮した積み立て投資法および具体的なおすすめ投資信託をご紹介します。
目次
3つの分散投資
まず3つの分散投資を解説する前に、投資信託のリスクについてお伝えします。
投資信託は投資のプロフェッショナルに運用を委託し、運用成績がよければ利益を得られ、逆に成績が振るわなかった場合は投資元本が目減りします。つまり、投資信託は銀行預金などとは異なり元本が保証された金融商品ではありません。そのため、資産を大きく増やせる可能性もある一方、大きな損失を出してしまうリスクもあります。
そこで特に投資初心者にとっては、3つの分散効果を発揮した投資法を実践することで、投資信託価格が上下に値動きするリスクを抑え、安定した成長を目指した運用を心掛けましょう。そして、3つの分散は資産の分散と地域の分散、そして時間の分散であり、以下にてそれぞれの分散効果を詳しく解説します。
3つの分散の1つ目が、資産の分散です。
投資信託では株式や債券、不動産投資信託、金など様々な資産を投資対象として組み込むことが可能です。一般的に株式と債券では、経済情勢などに応じて異なる値動きをする傾向にあります。
そこで、各資産の間で異なる値動きをするという特性に着目し、様々な資産を組み合わせる投資手法が資産の分散です。これにより、ある特定の資産が値下がりしたとしても、別の資産の値上がりでカバーするといったように、投資信託全体では価格が上下に変動するリスクを抑え、安定した投資を実践することが期待できます。
なお、個人投資家が購入できる公募投資信託の数は6,000本を超えており、中には株式や債券、REITなど資産の分散が図られたバランス型と呼ばれる投資信託もあります。そのため、投資初心者にとってはバランス型投資信託を購入することで、資産分散効果を発揮した投資を行うことができるといえるでしょう。
3つの分散の2つ目が、地域の分散です。
投資信託では投資対象を株式や債券など資産を分散させるだけでなく、投資対象国・地域を分散させることも可能です。日本以外の先進国や新興国などの資産を組み合わせることで、為替の影響もあり、資産の値動きが異なってきます。地域の分散においても、投資対象地域間で異なる値動きをすることに着目し、保有資産の間で生じる価格変動リスクなどを軽減することが期待できます。
なお資産の分散と同様に、地域の分散も国内と国外、先進国と新興国といったような異なる国・地域の資産に分散投資するバランス型投資信託で、リスクを抑えた安定的な投資を実践することができるでしょう。
そして3つの分散の最後が、時間の分散です。
時間の分散とは、一度に投資の元手を利用してしまうのではなく、積み立て投資を実践するかのように、少額かつ定額で投資を継続的に実践することで、投資信託の価格が高い時には少量を購入し、そして価格が低い時に多くの投資を行うことです。時間分散という投資手法を用いることで、長期的には一回当たりの投資価格が平準化されるメリットを有しており、短期的に起きる急激な値下がりリスクを緩和させる効果を期待できます。
それでは例を示して解説します。投資信託Aを毎月定額で1万円購入することとして、当初投資信託の価格が2,000円であれば5口購入できます。翌月に投資信託の価格が1,000円に下落した場合には10口購入でき、翌々月に価格が2,500円に上昇すれば4口購入し、3か月合計で19口の投資信託を保有することになります。
一方で、投資信託が2,000円の時にまとめて3カ月分購入すると15口しか購入することができないことになります。このように、時間の分散効果を活かした投資を実践することで、投資信託の購入単価を平準化させリスクを抑えた投資を行うことが可能になります。
おすすめの投資信託
ここからは3つの分散効果を発揮した投資を実践すべく、おすすめの投資信託を具体的にご紹介します。
eMAXIS Slimバランス
まず1本目が三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)です。
こちらは日本を含む世界各国の株式や公社債、および不動産投資信託の値動きに連動させた投資成果を目指すファンドです。特に、国内株式と先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券、国内リート、先進国リートといったそれぞれの資産に12.5%ずつ投資するユニークな特色を持った投資信託で、まさに株式や債券、リートで資産の分散を、国内と先進国および新興国で地域の分散を図ることができる投資信託です。
このファンドを購入し時間の分散効果を発揮させるべく、少額かつ定額の積み立て投資を行うことで、更にリスクを抑えた安定的な投資を実現することが期待できるでしょう。
なお、投資信託で長期投資を行う場合に必ずチェックしていただきポイントの1つが信託報酬です。信託報酬は投資信託を保有している間にかかる運用管理費用であり、投資期間が長期におよぶほど、信託報酬を低く抑えることが運用成績の良しあしに大きく影響してきます。
その点、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)は信託報酬率が年率0.1512%と低く抑えられており、つみたてNISAやiDeCoといった何十年にもわたる資産運用を手掛ける際に向いた投資信託といえるでしょう。
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
そしてもう1本が、楽天投信投資顧問の楽天・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・バンガード・ファンド(全世界株式))です。
こちらは日本を含む全世界の株式市場の値動きに連動した投資成果を目指しています。楽天・バンガード・ファンドは株式に投資する投資信託のため、地域の分散効果は享受できますが、資産の分散効果は期待できませんのでご注意ください。
そして、先ほどご紹介したeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)とは異なり、債券やリートなどへも分散投資するものではないため、より積極的に収益獲得を図りたい方に向いた商品といえますが、こちらの投資信託でも時間の分散効果を発揮した少額かつ定額の積み立て投資を実践することで、リスクを抑えた安定的な投資を行うことができるでしょう。
なおバンガードは、世界最大級の運用会社として、低信託報酬のファンドを世に送り出したパイオニア的存在であり、世界のインデックスファンドの約4割は同社のものです。そのため、楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)の信託報酬は年0.1296%と、同種の投資信託の中でも最低水準に抑えられた投資信託になり、つみたてNISAやiDeCoといった長期間にわたる資産運用を行う際には強い味方となるファンドといえるでしょう。
まとめ
最後となりますが、これまでリスクを抑えた投資信託の運用を実践すべく、3つの分散効果を活かした積み立て投資法と、具体的なおすすめ投資信託をご紹介してきました。つみたてNISAでは最長20年間、そしてiDeCoでは最長40年間におよぶ資産運用となります。
今回ご紹介した3つの分散効果を発揮したバランス型投資信託など購入し、安定的な投資を実践するすることで、着実に資産形成を図ってみてはいかがでしょうか。
- Written by ファイナンシャルライター
- 元外資系証券マン。現在はフリーランスとして金融関連の記事を執筆しています。趣味は海外旅行、海外サッカー観戦など。